こんにちは!ドミです。
コンクールまであと1か月。課題曲はある程度吹けるようになってきて、今は音程合わせに苦しんでいる時期だろうと思います。
本日は、和声が複雑すぎてやばいと噂の2022年課題曲Ⅲ『ジェネシス』について楽曲分析(アナリーゼ)を行いましたので解説していきます。
作曲者の鈴木英史さんの解説では
「さり気なく変化する調性、内声や和声の色合いに大いに注目して表現してください」
『ジェネシス』のスコア表紙裏の解説より引用
と記載ありますので、調整がどのくらいさり気なく変化してるかに注目して分析しました。
『ジェネシス』はいったい何回転調しているのでしょうか。ぜひ最後までお読みください。
どこで転調しているかアナリーゼ初心者でも分かるように、転調しているところは楽譜に星マークを入れてます。
なお、本記事の解説はコードネームの読み方についてある程度理解している方に向けて書いています。
今回アナリーゼしたpdfも配布しています。ぜひ練習にご活用ください。(こちら)
ではどうぞ
解説の前に
本記事内では調性や実音、コードネーム、練習番号でそれぞれアルファベットを使いますので、表記の使い分けについてここで説明しておきます。
また、本記事の解説ではトニックとドミナント、サブドミナントの話がよく出てきますので、ここで軽く説明しておきます。
トニック、ドミナント、サブドミナントは和音の機能を表す言葉です。
- トニック(T)
その調性の中で最も安定している和音のこと。I度、III度、VI度の和音がこれにあたる。 - ドミナント(D)
不安定な響きを持っていて、常にトニックに向かおうとする和音のこと。主にV度やVII度の和音がこれにあたる。 - サブドミナント(SD)
トニックとドミナントを彩る補助的な和音。II度やIV度の和音がこれにあたる。
ドミナントは常にトニックに向かうんだなぁということが分かっていればおおむね大丈夫です。
T、D、SDはコード進行を分析する上で重要な要素ですので、この機会にぜひ覚えていってください。
お待たせしました。それでは解説に参りましょう。
冒頭~
冒頭の「Grandioso」は「壮大に」という意味です。テンポに書いてある「ca.」は「だいたい」という意味で、テンポはおおむね♩=104ほどと指示されてます。
落ち着いたテンポで堂々と演奏しましょう。
調性は最初からブレまくります。
冒頭Fdurでスタートしたかと思えば、さっそく3小節目には半音階的進行を経てFmollに転調。
2小節目3拍目の和音は半音階進行を作る過程でできる偶然できた和音で、偶成和音と判断できます。
3小節目のFmollの和音は自然的短音階(NM)から借用しています。Fmoll(NM)はA♭durと同じコードスケールを持っているので、ここの和音はA♭durにも聞こえますね。
また、4小節目には9thと11thのテンションが加わったIImの6和音【Gm11】という非常に複雑な和音が登場した後、ドミナントの【C7】から強引にFdurに引き戻されます。
このIImの6和音からドミナントで強引に元の調性に戻るという技は今後連発されますので、よく覚えておいて下さい。
その後6小節目にはE♭mollに転調。
7小節目3拍目の和音はIVm9【Abm9】とも取れますが、そうすると低音が9thのテンションコードを吹くことになり、とても不安定です。
7小節目は低音がE♭moll(NH)のスケールで1音ずつ下がっていくので、私の意見としては3拍目のB♭の音を根音と取りたいところ。つまりここはV7sus(♭9)(♭13)(omit5)【B♭sus(♭9)(♭13)(omit5)】と考えるのが妥当かと思います。
8小節目の1拍目はサブドミナントマイナーからの変終止であり、かつ、3音が省かれた【E♭(omit3)】のパワーコードで終止するため、長調か短調かも分からない独特の終止感を出しています。
ここではE♭mollからアプローチしてくるので、私には若干短調の雰囲気に聞こえます。
変終止は一般的に終止感が弱い終止です。一方でomit3のパワーコードは濁りの要因になる第3音が省略されているため非常に力強い響きになります。
終止感の弱い変終止と力強いパワーコードのアンバランスさが、調性が不安で曲全体を通して終止感の弱いこの曲の雰囲気を助長していますね。
冒頭のコード進行だけですでに3回転調しています。
この曲の調性が不安定であることを冒頭から明示していますね。
練習番号A~
Aからはこの曲のテーマが登場する印象的な場面ですが、和声はどんどん複雑に変化していきます。
調性は冒頭のFdurからE♭durに転調。
9~10小節の和音はE♭durのダイアトニックコード3和音であり、他と比較すると非常に単純な和音です。
しかし11小節目でEbmollに転調。これも自然的短音階から借用しており、G♭durと同じコードスケールということで、G♭durの調性にも聞こえます。
さらに11小節目の4拍目は♭IIのナポリの和音が使用されています。ナポリの和音とはIImの根音を半音下げる(下方変位)させた和音で、サブドミナントとして機能します。
また、取り様によっては2拍目からの続きでG♭durの第3音のFの音がF♭に下方変位している(エオリアの7度)と解釈することができます。
ここは解釈よって、長調か短調か変わるので、非常に不安定な和音となっています。おしゃれな和音ですね。皆さんは長調と短調どちらに聞こえますでしょうか?
さて、そんな不安定な和音の次にくる12小節目にはIImの6和音が再登場し、その後ドミナントで強引にEdurに戻してお口直し。この流れは4小節でやったものと同じですね。
13小節目はIIIm7→VIm7と進行します。これはEbdurの平行調であるCmollとして見るとVm7→Im7となっていて、ドミナントからトニックに向かう強い進行となるため、Cmollの雰囲気が感じられます。
14小節目の1,2拍目は3拍目のIIIm7に向かうセカンダリードミナントとなっており、ここでは一時的にGmollの調性となります。GmollはCmollの属調ということで相性がよく、ここでの転調は非常にスムーズです。
15小節目は三度登場のIImの6和音で強引にE♭durに戻し、16小節目はトニックであるE♭の和音でまとめられます。
ここだけでも6回の転調が確認できます。
転調は多いですが殆どがE♭の音を主音とする調なので転調が多いにも関わらずまとまりを感じます。
練習番号B~
Bから記譜は\(\frac{4}{4}\)拍子ですが、8分音符の連桁の繋がりから、ここでは「\(\frac{3}{8}+\frac{3}{8}+\frac{2}{8}\)」の変拍子となっていることが分かります。
発想記号の「Giocoso」は「楽し気に」という意味で、「leggiero」は「軽く、優美に」といった意味です。
指示されている通り、楽しく軽やかに~~と行きたいところですが、sus4やテンションが多用されてるようになってきて、和音の複雑さに拍車がかかってきます。
Bでは最初の17小節目からsus4が登場(しかも9thのテンション付き)。sus4のコードは第3音が半音上がった和音で、浮遊感のあるおしゃれな響きがします。
19小節目では7音のみ短調から借用するエオリアの7度も登場し、一時的にE♭mollの響きになります。
21小節目ではE♭mollの自然的短音階から借用しており、G♭の調性にも聞こえます。
さらに23小節目1拍目はD♭durに転調しており、サブドミナントマイナーである♭VII(add9)の和音です。
23小節目の2拍目裏もD♭durのサブドミナントマイナーである♭VI6【B♭♭6】で継続し、24小節目でやっとドミナントであるV【A♭】に進行します。
ここでは5回の転調です。
23小節目あたりからE♭moll?、G♭dur?、D♭dur?、A♭dur?と主音が定まらい感じになり、調性が薄れて行く雰囲気がよく分かります。
練習番号C~
「Animato」は「元気に、活き活きと」、「e」は接続詞で英語ではandの意味の「と」、「cantabile」は「歌うように」という意味です。
25小節目1拍目の【D♭Maj9】はD♭durから見るとトニックであり、24小節目のドミナントからの強い進行となります。
一方で24小節目からA♭durに転調しているとみることもできます。
24小節目の【A♭】はA♭durのトニックであり、25小節目1拍目の【D♭Maj9】はサブドミナント、3拍目の【E♭9】は根音を省略したドミナントといったように、Cからの2小節間はA♭durの調性とみることができます。
24、25小節目はA♭durとして見るとT→SD→D→Tという非常に基本的なコード進行であることが分かります。
続いて27小節目からはE♭mollの自然的短音階から借用された和音が続きます。E♭mollの自然的短音階はG♭durと同じ和音なので、27小節目からはG♭durの調性にも聞こえます。
31小節目の4拍目はE♭mの付加6の和音で、これは旋律的短音階(HM)からの借用となります。
旋律的短音階は3度以外はdurと同じ音なので、32小節目の和音はE♭durにもE♭moll(HM)のどちらにも聞こえます。
2回目の場合はコーダマークで練習番号Jに行きます(練習番号Jの解説はこちら)。
ここの転調は2回です。
転調の回数は少ないですが27小節目からは主音がE♭に戻り、E♭mollから徐々にE♭durに迫ってくる感じが見事に表現されています。
練習番号D~
「Broadly」は「幅広く」という意味です。サウンドに広がりが出るように演奏しましょう。
33小節目からはE♭durに戻ってきます。
先ほども説明しましたが、直前の32小節目がE♭mollにもE♭durにも取れるため、スムーズにE♭durに遷移しています。
Dからの2小節間は階梯導入がメインであり、和声的には単純な構造となっています。
35小節目は14小節目とほとんど同じですが、7thの音がないため13thのテンションは付加6と捉えることができます。まぁ、テンションがついているのは変わらないので表記上そうしているだけで、実際演奏する分にはほとんど変化はないです。
38小節目は14小節目と同じです。詳しくはAの説明を参照ください(Aの解説はこちらから)。
ここでの転調は5回でした。
ここでの転調は5回です。
練習番号Aの動きを階梯導入で表現しているだけで、和声的にはほとんどAと変わりません。
練習番号E~
たった4小節間ですが、ここでは大きく転調しますので非常に重要な4小節間です。
39小節目は4回目の登場となるIImの6和音で、調性はE♭durです。
この曲では2度の6和音の後は毎回ドミナント、つまり5度の和音に進行していました。なので次の和音はE♭durの5度の和音である【B♭】に行きたくなります。
しかし、40小節目では【B♭】には行かず、B♭durのサブドミナントマイナーである♭VII7【A♭7】をsus4化して9thを足した♭VII9susに進行していると解釈でき、行きたい和音の一つ手前の和音に進行しています。
また、同じく40小節目の♭VII9susもサブドミナントマイナーなのでドミナントに向かいたい和音です。
ここの調性はB♭なのでここでのドミナントはB♭durの5度の和音で【F】です。
ということで41小節目は【F】の和音に行きたいのですが、ここではFdurのドミナントであるV7【C7】をsus4化させてさらに9thを足したV9susの和音に行きます。
ここでも期待した和音ではなく、そのドミナントに行くという肩透かしな進行をしています。
といったように練習番号Eでは来てほしい和音に行く前に転調しており、転調感の強いポイントとなっています。
ここはたった4小節ですが3回転調しています。
ここの転調は意図的に流れを切って、食い気味に転調していきます。
旋律も同じようにフレーズが終わりきる前に次のフレーズが始まりますので、コードも旋律と同じ動きをしているように感じますね。
練習番号F~
Fの発想記号「con」はイタリア語の前置詞で「~と一緒に、~を使って、~を持って」という意味です。(英語のwithみたいな意味です。)
つまり「Cantabile con anima」は「生き生きと歌う」という意味になります。
練習番号Fの43,44小節目は42小節目とほとんど同じ和音で、sus4独特の浮遊感を感じる部分となっています。
45小節目では和音がついに【FMaj7】のトニックに解決します。練習番号Eから続いていたサブドミナントマイナー、ドミナントの緊張感からやっと開放されますが、2回転系であるため終止感はあまりありません。
47小節目は48小節目のIIm【Gm】に対するセカンダリードミナントとなっており、一時的にGmollの調性になります。
47小節目4拍目の和音は【F♯dim】の和音になっていますが、これは【D7(♭9)】の根音を省略していると解釈でき、ドミナントの機能を持っています。3拍目のメロディーは9thと11thのテンションとなっています。
48小節目の1拍目の和音は47小節目4拍目がドミナントであることから考えると【Gm】とみることができます。しかし、そう捉えるとベースのCの音が11thのテンションコードとなり、非常に不安定です。
ここは【C9(omit3)】と考えることでベースが根音となり、比較的安定するように思えます。第3音がないため、長調か短調かがはっきりしませんが、だからこそ中高音の【Gm】の和音が際立って聞こえるという効果を期待しているように思えます。
48小節目の4拍目はドミナントであるV7sus【C7sus】の9thテンションが半音下がるというオルタネードコードが出てきます。9thが半音下がることで短調の雰囲気が出ています。
49小節目1拍目はFdurのトニックである【F】の根音を省略したもので、48小節目4拍目のドミナントから一時的にトニックへ解決します。
49小節目2拍目では9th,13thのテンションが加わった7sus4という非常に浮遊感のある和音になります。1拍目でせっかくトニックに解決したのに、再びsus4の世界に引き戻されます。
ここでの転調は2回だけです。
ここは転調というよりも低音がずっと属音を伸ばしていて、トニックになかなか解決しない緊張感があります。さらにsus4の和音も多用されているので上記の緊張感に加え浮遊感もあって独特の雰囲気です。
練習番号G~
50小節目の3拍目はV7sus、4拍目はV7に進行しますが、51小節目はV7の3音が省略されてomit3となります。omit3の和音は長調か短調か分からないため、ここの調性は一時的に不安定になります。
52小節目1拍目はV9sus(13)となるため、テンションの音から長調であることが分かります。
52小節目の3拍目は低音にGの音があり、これにより低音はドミナントであるV【C】の和音と見て取れます。一方でメロディーはトニックであるIMaj7【FMaj7】の和音となり、ここはトニックとドミナントが同時に存在する部分です。(低音とメロディーを無理やり1つのコードで表すならVsus4の13thと10thのテンションコードとなります。)
53小節目は低音がCの音に移ることで、IMaj7のトニックに解決します。
ここでは転調はありません。全練習番号で唯一転調のない部分ですが、omit3が出てきたり、トニックとドミナントが同居していたり、和音の響きだけでなく機能面も不安定になってくる部分です。
練習番号H~
発想記号の「Affettuso」は「愛情を込めて、情趣豊かに」という意味です。
54小節目は1拍前のEの音から半音階的進行でGmollに転調しており、54小節目1拍目はGm(HM)から借用したIVm6の和音です。
この和音はFdurのドミナントである【C7】の和音の第3音が下方変位しているもので、非常にスムーズにGmに転調しています。
54小節目4拍目はF♯とCのトライトーンがあるため、【Gm】へのドミナント機能を持っています。具体的には【D7(♭9)】の根音を省略した和音です。
続いて問題児である55小節目1拍目の和音。ここにはアボイド(AV)よばれる非和声音が含まれています。
アボイドは短9度の音程を作る音のことで響きが非常に濁るため、和声的に好ましくないとされています。
ここではGmollにおける♭IIIaugの第3音であるDの音と短9度の関係になるE♭の音がアボイドに該当しますが、omit3でDの音は省略されているため、厳密には短9度の響きが鳴るわけではなく、アボイドではあるものの、濁った響きにはなりません。
これまでsus4が多用されてきた背景を考えるとここのE♭は♭IIIaugの第3音であるDを半音上げたsus4的な和音と考えることができ、非常に珍しい和音です。
この♭IIIaug(Maj7)(9)(11)(omit3)はGmoll(HM)のトライトーンであるF♯とCの音を含んでいるため54小節目4拍目と同様に【Gm】へのドミナント機能を持っています。(ドミナントとして無理やりコード付けするなら【D7(♭9)(♭13)/B♭】となりますがこの場合♭13thの音が低音に来るので響きはよくないです。)
54小節目4拍目からF♯とCの音をしっかりと維持しながら、他の音を変えることで、非常に優美な和音になるでしょう。
また、55小節目の低音のB♭の音は3拍目の【Gm】の第3音を先取りしており、かつ後述しますが、56小節目からのE♭durの属音のペダルトーンでもあるため、E♭durへの転調の動機付けにもなっています。
56小節目からはFm(HM)とも取れますが、これまでのペダルトーンの関係からすると低音でB♭が鳴っているのでE♭durと判断するのが妥当でしょう。
旋律にD♭の音がありますが、これはE♭durの「ナポリの7度」と解釈でき、E♭mollから7度の音だけ借用して♭になっています。部分的に短調から借用するので和かな響きのする和音です。
ここの発想記号である「dolce」は「甘く」といった意味ですからぴったりですね。
57小節目では再び♭IIIaug(Maj7)(9)(11)(omit3)→Imの進行になります。sus4っぽい非常に独特な和音が繰り返し提示されます。
また、ここもFdurのトライトーンであるEとB♭の音が含まれているため、【Fm】へのドミナントモーションがかかっています。
そしてdolcissiomo(dolceの最上級)と指示された58小節目は、第5音が下方変位したIm7(♭5)の和音となります。下方変位することで響きはさらに柔らかくなり、非常に甘い響きの和音となります。
ちなみに見方を変えると58小節目の和音はE♭moll(NM)のIVm6とも解釈でき、次の59小節目に向けたサブドミナントマイナーと解釈することもできます。
ここでの転調は3回です。
♭IIIaug(Maj7)(9)(11)(omit3)はどの参考書にも出てこない大変珍しい和音です。
しかし、ちゃんとドミナントの機能は持っていますので、トライトーンを意識して演奏すれば魅惑の和音が楽しめることでしょう。
練習番号I~
Iからは再び「Broadly」となります。広がりを持って演奏しましょう。
59小節目はトニックの【E♭】から始まり、60小節目には13th(6th)、9th、♯11th、とテンションが加わっていきます。
61小節目の「poco più mosso」は「少し早く」という意味です。
61小節目以降はテンションがいくつか使用されていますが、E♭durの和音で構成されており、調性の変化は少ないです。
62小節目3拍目のIIm、63小節目のV7sus→V9の進行は本来非常に強い進行であり、トニックである【E♭】に向かいたい気持ちがかなり強く想起されます。
しかし、63小節目3拍目のV9は(omit3)となっていて、肝心の第3音であるDの音がありません。
Dの音がないとドミナントに欠かせないトライトーン(ここではDとA♭の音)を作ることができず、トニックに向かう気持ちが薄くなります。
実際ダルセーニョして戻る練習番号Bの和音はV9susの【C9sus】となっており、トニックには戻りません(練習番号Bの解説はこちら)。
一番心地よいのは63小節目3拍目にDの音があって、練習番号Aに戻るという形ですが、おそらくここではあえてそうせず、意図的に強い進行を避けていると感じます。
ここでの転調回数は1回だけです。
やっとE♭durに固定され、II-Vの動きで【E♭】に向かうぞ!という場面ですが、感じなところで第3音が省かれていて、再び調整が不安定な練習番号Bへ突入する感じです。
練習番号J~
Jからは冒頭と同じ「Grandioso」の指示が出されています。
また、「Tempo I」(テンポ プリモ)で最初のテンポに戻るよう指示されているため、冒頭の再現部と認識して間違いないでしょう。
和声的には練習番号Aと同じです。
ここでの転調回数は5回です。
使っている和音は練習番号Aと同じですが、ところどころボイシングが異なっているので響きは練習番号Aと異なります。
練習番号K~
70小節目はこの曲でおなじみの2度の6和音です。
これまではVのドミナントに向かっていましたが、ここではIの2回転形に進行します。
Iの2回転形はVsus4と似ていますので、Vの代わりに使用されることがあります。
ここでもVの代わりとしてIの2回転形を使っていると言えるでしょう。
71小節目の2拍目はさらにVsus4に近いImの2回転形となり、3拍目ではついにVsus4そのものになります(omit5ではありますが、)。
また、3拍目以降は7小節目の3拍目からと同じ進行ですが、E♭mollからアプローチしていた7小節目に対して71小節目はE♭durからアプローチするため、72小節目1拍目の音は長調のように感じられて、(omit3)でありながら終止感の強い終わり方になっています。
ここでの転調は2回です。
71小節目の進行は半音階の進行がとても美しいです。
また長調か短調か分からない最後の(omit3)が冒頭の時と聞こえからが変わっていい仕事しています。
曲全体の転調回数は?
気になる転調回数の合計は、、、、
44回です!(D.S.含む)
非常に多いですね。
でも聞いている感じだとここまで転調しているとは感じられず、もっとまとまった感じに聞こえます。
これは練習番号E以外は非常に関係が近い調への一時的な転調であるため、さり気なく転調しているためでしょう。
鈴木英史さんの作曲者コメントは嘘ではなかったということですね。
アナリーゼの総括(pdfの配布)
今回は2022年吹奏楽コンクール課題曲III『ジェネシス』についてアナリーゼしていきました。
借用和音が多く、目まぐるしく調性が変化していますが、どれも非常に関係が近い調からの借用なので、転調感は少ないです。
一方で、各和音には多分にテンションコードやsus4のコードが使われており緊張感や浮遊感が感じられる構成です。
テンションコードやsus4のコードは多少濁る和音なので音程取りが難しいです。ピアノなどで鳴らしながらその響きをしっかり確認して練習しましょう。
今回アナリーゼした資料はこちらで配布しています。ぜひ練習にご活用ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ご質問や間違い、リクエストがありましたらコメントいただけますと嬉しいです。
参考資料
今回アナリーゼするために使用した参考資料を紹介します。
課題曲だけでなく自由曲もアナリーゼしてみたいという人は参考になると思います。
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