こんにちは!ドミです!(#^^#)
全国の吹奏楽部が競う吹奏楽コンクール。
吹奏楽部員なら「全国大会に行きやすい自由曲はあるのだろうか?」と一度は考えたことがあると思います。
今回はそんな疑問にお答えするため、過去10年分のコンクールの結果から、全国大会に出場しやすい自由曲を調査しました。
せっかくコンクールに出るなら全国大会に出やすい曲を選びたいですよね。
次回のコンクールの自由曲はコレで決まりだぁ!!
早く結論を知りたい人はこちらからご覧ください。 「全国大会に行きやすい曲」と判断された7曲へ飛ぶ
中学校の部は前回まとめていますので、こちらからどうぞ。
吹奏楽コンクールとは
吹奏楽コンクールは「全日本吹奏楽連盟」が主催するコンクールで、吹奏楽の中では最も規模が大きく、 今年で第69回を迎える歴史ある大会です。
各校12分の持ち時間で課題曲と自由曲の2曲を演奏し、その技術力と表現力を競います。
吹奏楽コンクールにおいて全国大会に出場することは全吹奏楽部員のあこがれであり、いわば野球部の甲子園、陸上部のインターハイ、ラグビー部の花園的な存在です。
そんな憧れの全国大会は非常に狭き門で、中学、高校ともに30校ずつしか参加することはできません。
今日も吹奏楽部員は全国大会への出場を目指して練習に励んでいることでしょう。
コンクールでは自由曲の選曲が超重要
吹奏楽コンクールでは課題曲と自由曲の2つの曲を演奏します。
課題曲は毎年4~5曲が事前に運営により決められていて、各校その中から1曲を選びます。
課題曲は4~5種類しかないので、当然他の学校とかぶることが多く、一定レベル以上になると課題曲で差を付けることは難しいです。
そこで重要になってくるのが、自由曲の存在です。
自由曲はその名の通り、各校が自由に選ぶことができる曲です。技術力や表現力を最大限にアピールできる自由曲を選んだ方がコンクールではいい成績を残しやすいということです。
瞬足の「コーナーで差を付けろ!」じゃないですけど、「自由曲で差を付けろ!」という精神がコンクールでは大切ということですね。
全国大会に行きやすい曲の調査
吹奏楽コンクールで全国大会に出場するには、自由曲の選曲が大切です。
となると当然「全国大会に行きやすい自由曲ってあるんだろうか?」という疑問がわきますよね。
吹奏楽部員なら誰しもが一度は考えたことありますよね??
ということで、今回は「全国大会に行きやすい自由曲」について過去のコンクールの結果から調査することとしました。
過去の吹奏楽コンクールの結果は有志によりデータベース化されおり、誰でも簡単に確認できるようになっています。
今回はこちらのデータをありがたく使わせていただき、大人げないほどに、がっつり統計的な分析を行いました。
「全国大会に行きやすい曲」の見つけ方
今回は以下の手順で「全国に行きやすい曲」を探しました。
- 期間は直近10年分(2010~2019年度)
- すべての支部大会の高校の部を対象(高校のみを対象)
- 支部大会で金賞を受賞したデータすべてを対象(実力による差を無視するため)
- 「金賞を受賞した団体はすべて同じ確率で全国大会に行ける」という仮説を考える
- 1回の支部大会で全国に行ける確率は、その曲が演奏されたすべての支部大会の全国出場率の平均値とする。
- 仮説が正しいとしたときに、実績の回数以上に全国大会に出場できる確率が10%以下(α≦0.10)の場合、仮説を棄却し、その曲は統計的に「全国大会に行きやすい自由曲」と判断する。
- 本来その曲が持っている全国出場率を67%と仮定し、検出力(1-β)が80%に満たないものついては「データ不足」とし結論を見送った。
なるほど、分からん!という人向けにこちらの記事で詳しく解説していますので、、気になる方はぜひご参考ください。 全国大会に行きやすい曲の調査方法について
統計的に「全国大会に行きやすい曲」と判断された7曲
2010年~2019年の支部大会で金賞を受賞した自由曲393曲すべてを検定にかけました。
検定の結果、「全国大会に行きやすい曲」と判断された自由曲は、
なんと7曲もありました!!!
前回の中学の部でもそうでしたが、難曲がそろってますね。一曲ずつご紹介しましょう。
復興 (保科洋)
この曲は、ヤマハ吹奏楽団の創立50周年を記念して2009年に作曲されたものです。
タイトルについては保科さんの公式ページにその意味合いが記載されていましたので引用します。
タイトルの“The rebirth”【復興】とは、ヤマハ吹奏楽団がたどった50年の歴史に思いを馳せつつ、未来の更なる飛躍への期待をイメージして命名したものです。
https://hoshina-music.com/works/compositions/windband-compositions/the_rebirth
『復興』というタイトルだけ聞くと、3.11のために作曲されたのかなと思うのですが、違うようです。
序盤は暗い雰囲気で始まりますが、復興というだけあって、徐々にエネルギッシュに変化、ドラマティックにラストを迎えます。
楽譜は保科さんのオフィシャルサイトからレンタル可能で料金は以下の通りです。安い!
レンタルの際は以下のサイトの上部バーにあります「レンタル/販売楽譜」からどうぞ。
保科さんは楽譜の扱いについてかなり慎重な意思表示をしています。ここではそれを尊重するため、販売ページの直リンクは避けております。
パガニーニ・ロスト・イン・ウィンド (長生淳)
でました問題児。これを自由曲にするには大変な覚悟が必要です。木管の連符がやばいと思いきや、金管楽器も連符がえぐいという一曲です。
この曲は須川展也氏の委嘱により2008年に書かれた、2本のアルト・サクソフォンとピアノのための曲がオリジナルです。
それがこちら、この時点でやばいのです。(演奏は東京芸大の同期でおなじみ、上野耕平さんと松下洋さんのペアで、ピアノは黒岩航紀さんです。)
このやばい曲を、東京佼成ウインドオーケストラのために、各パート1人ずつで演奏出来るように、と2011年に編曲したものが今回の『パガニーニ・ロスト・イン・ウインド』です。
とまぁ、作曲から編曲まですべてを最前線のプロのために書かれた曲で、その演奏難易度は超絶技巧の域にまで達しています。(長尾淳さんの作品はとある事情から難易度が高い曲が多いです。この辺は語りだすと止まらないのでまた別の記事にします。)
こんな曲でコンクールに挑むのは、マラソンにバイクで参加するようなものです。そりゃ強いわけです。まぁ、この難曲を吹きこなすことができれば、の話ですが、、、
楽譜は39,050 円(税込)です。
華麗なる舞曲 (C.T.スミス)
はい、連続で出ました問題児2号です。これはもうマラソンにジェット機レベルです。
金管はヤバイ!!!木管も全然ヤバイ!!!楽譜はまっくろくろすけ!!え?これを吹くって正気ですか??という曲です。
この曲はあのホルン殺しで有名な『フェスティヴァル・ヴァリエーション』を作曲したC.T.スミスがアメリカ空軍軍楽隊の委嘱を受けて作曲しました。
「時間の制約以外は無制限でいいよ」との指示だったそうで、C.T.スミスは大喜びで作曲作業に打ち込んだと言われています。相変わらずホルンが可哀そうなほど難しく書かれていて、乾いた笑いが出てしまします。
楽譜は輸入譜で¥21,868(税込)です。
大阪俗謡による幻想曲 (大栗裕)
朝比奈隆の海外公演のために書かれた作品で、初演は1956年と結構古めの曲です。
もともとはオーケストラのために書かれた曲ですが、大阪市音楽団の依頼を受け作曲者自身が吹奏楽版に編曲したものがこの曲です。
大阪の祭囃子が西洋音楽と見事に融合していますね。中学校の部編でも演出された『3つのジャポニズム』と似た、ジャポニズムの精神を感じます。
楽譜は¥19,360(税込み)です。
バレエ音楽《ダフニスとクロエ》第2組曲 (ラヴェル (立田浩介))
こちらも木管殺しで有名な一曲。ふつうの高校生ではまず冒頭のフルートが吹けなくて合奏になりません。
この曲はバレエ『ダフニスとクロエ』のために書かれた曲を1913年に組曲に編成し直したもので、作曲者は『ボレロ』などで有名なのラヴェルです。
作曲された当時は印象派音楽の時代です。フランス絵画のように抽象的な美しさが特徴となっています。
『ダフニスとクロエ』はいろいろな方が吹奏楽版にアレンジしているのですが、今回検定でピックアップされたのは「立田浩介さん」編曲のものです。(今回は同曲でも編曲者が別なら別でカウントしている)
しかしこれ、調べても楽譜の出版はありませんでした。
さらに、コンクールでは大阪府立淀川工科高等学校しか演奏しておらず、立田浩介さんについて検索もしましたがまともな情報はゲットできませんでした。淀工の『ダフニスとクロエ』についてご存じの方いましたらコメント欄に情報お願いします。
ちなみに、編曲者に関係なく集計したとしても、『ダフニスとクロエ』は「全国に行きやすい曲」と言えます。立田浩介さんの編曲にこだわる必要はないのかもしれません。
パラフレーズ・パァ「スタティック・エ・エクスタティック」アヴェック・アン・プロローグ・エ・レピローグ (天野正道)
アナウンスの人が題名を嚙むんじゃないかと心配になる一曲。
この曲は川崎市立東橘中学校吹奏楽部顧問の飯島一樹先生からの委嘱されて作曲されましたが、中学校に向けた委嘱作品とは思えないほど音楽性に富んだ作品です。
気になる題名の意味についてですが、調べても出てきませんでした。
よって、これは私の私見になりますが、おそらくフランス語の「Paraphrase par 「static et ecstatic」avec un prologue et l’épilogue」をカタカナ表記したものだと思います。
題名の意味は「とあるプロローグとエピローグの言い換え「静的におよび恍惚に」」とでもなりましょうか。
非常に中二臭く、なんとも中学生らしいタイトルでカッコいいと個人的には思います。
このためにフランス語講座の動画を見て勉強しましたが、間違っていたら恥ずかしいので情報持っている人はコメント欄にて情報頂ければ幸いです。
楽譜は30,800円(税込)です。
交響詩《アラベラ》 (R.シュトラウス (田村文生))
この曲はオペラ『アラベラ』のために1932年に書かれた曲です。
作曲者のR.シュトラウスは先ほど紹介した『ダフニスとクロエ』を書いたラヴェルと同じくらいの時代に活躍した人で、オペラや交響曲で有名です。
中でも有名なのは交響詩『ドン・ファン』だと思います。
この曲の冒頭はテレビでもよく使われているので、一度は耳にしたことあるでしょう。
『アラベラ』にもこのきらびやかさは踏襲されていると思います。
楽譜は4,4000円(税込み)です。
全393曲の検定結果一覧
その他「有意差なし」となった曲も合わせて、393曲すべての検定結果は以下の通りです。自由曲選びの参考にしてください。
使いやすいようにエクセルファイルも配布します。こちらからダウンロードください。全393曲のエクセルデータ
まとめ
今回は「全国に行きやすい曲」はあるのか?ということで高校の部のコンクールデータを分析していきました。
こちらの前提で調査した結果なんと7曲も「全国に行きやすい曲」があることが判明しました。全データが気になる人はこちらからどうぞ
- 期間は直近10年分(2010~2019年度)
- すべての支部大会の高校の部を対象(高校のみを対象)
- 支部大会で金賞を受賞したデータすべてを対象(実力による差を無視するため)
- 「金賞を受賞した団体はすべて同じ確率で全国大会に行ける」という仮説を考える
- 1回の支部大会で全国に行ける確率は、その曲が演奏されたすべての支部大会の全国出場率の平均値とする。
- 仮説が正しいとしたときに、実績の回数以上に全国大会に出場できる確率が10%以下(α≦0.10)の場合、仮説を棄却し、その曲は統計的に「全国大会に行きやすい自由曲」と判断する。
- 本来その曲が持っている全国出場率を67%と仮定し、検出力(1-β)が80%に満たないものついては「データ不足」とし結論を見送った。
面白いことに前回分析した中学校の部で上がっていた曲は一曲もなく、全体的に難易度が上がっている印象です。
どうやら難しい曲ほど、支部大会で金賞を取れれば全国に行きやすいようです。
ま、考えてみれば当たり前ですが、難しい曲を吹きこなしたというだけで技術点も芸術点も高めが付いてしまうということでしょう。
コンクールの予選は早くて7月の上旬には行われます。いくら難しい曲を吹きこなせば上に行けるからと言っても、この最初の大会で落選してしまっては意味がありません。
本当に全国大会に行きたい!と思うのであれば、1年生、2年生の時からしっかりと準備をして、3年生の7月上旬に今回の7曲のような難曲を仕上げられるだけの技術力が必要なのかもしれませんね。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
分析の内容についての質問や、他にもこういうことを分析してほしい等、要望がありましたらぜひコメント欄までよろしくお願いいたします。
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